令和に復活!1963年製の3軸バス「MR430」

見学のご案内

MR430の使用情報
現在車庫に保管中
※緊急整備、取材、社員研修等で急遽車両を使用することがあります


MR430は共栄バスセンター隣接のバリアフリー研修施設に格納しており、見学可能エリアから窓越しに見ることができます
見学料:無料
見学可能時間:9:00~17:00
※車両状態維持のためイベント等以外は窓越しからの見学とさせていただきます
※バス通行帯、バス駐車帯は事故防止のため立入禁止です
※点検整備、取材、社員研修、イベント等で車両が出庫している場合があります


お車でお越しの際は共栄バスセンター駐車場をご利用ください
※バス専用道路は進入禁止です。誤進入にご注意ください。

MR430関連動画(旭川電気軌道公式YouTubeチャンネル)


レストアが完了したMR430

1963年(昭和38年)に旧旭川バスが導入し、1978年(昭和53年)で廃車となった後も場所を転々としつつ保管されていた廃車体を譲り受け、
会社創立100年も迫っていることから記念事業の一環として走行可能状態までレストアした。
MR430でも呉羽車体工業製の車両は旭川電気軌道が所有していた3台のみで当時においても希少な車体であったという。
エンジンや動力部品は当時のパーツをそのまま使用しており、万が一故障が発生した場合に補修部品の調達が困難であることから過度の走行はできない。
走行する度に何処かが壊れる覚悟が必要と整備工場から忠告されており、非常にデリケートな車両である。
※可能な限り状態を維持するため路線定期運行、一般貸切運行はいたしません
※ABS(アンチロックブレーキシステム)非装備のため貸切バスの路線流用はできません

MR430の運転席は現代のバスと比較してシンプルな印象。必要最小限の機能が昭和を感じさせる。
エンジンキーはなく、予熱ボタン操作後デコンプレバーを引きながらスターターボタンを押してセルモーターを回し、頃合いを見てデコンプレバーを引き下ろし始動させる。
エンジンに魂を吹き込む、当時の乗務員は皆そのような想いで扱っていたのかもしれない。
デコンプレバーはそれなりに重く、エンジン始動や停止には多少の腕力が必要とされ、現代のバスのようにキーを軽く回すだけでは済まない。
前照灯の切り替えはクラッチペダル横のスイッチを足で操作する。
クラッチはノンシンクロ。ギアは5速MT。
変速する際のダブルクラッチ操作、床から生えているペダルの扱いに慣れていなければ調整幅の限られているシートも相まって運転が難しい。
ミッションが温まるまでギアの入りが非常にシビアではあるものの、温まってしまえばスムーズに変速が可能。
シフトストロークが長く、ゆっくりとギア操作をする運転手の姿に懐かしさを感じる人も多いのではないだろうか。
当時では珍しかったパワーステアリングを装備しているためハンドル操作に苦労はないというが、現代の車両よりは確実に重い。



エンジンはガスケット等の補修部品が入手不可能であるため内部の確認はせず、可能な限り洗浄や調整、再塗装を施した。
40年以上も眠っていたというエンジンだが、状態がそれほど悪くなかったのが幸運だったようだ。
冷間時はデコンプレバー操作が必要なものの、暖気後の再始動はデコンプ操作の必要はない。
走行の肝であったパワステポンプは既に取り外され欠品していたため調達に難儀していたが、
道東地方にあるMR450の廃車体にパワステポンプが付いていたとすれば流用できるのではないかとの情報を元に現地へ出向き、
6DB1型エンジンが搭載されていた廃車体から部品を譲り受けた。ポンプの状態は良好で、特段加工することなくそのまま使用できたのが幸運だった。
DB34型に付いていたポンプと同型ではないものの、後に改良された部品のようだ。
その後パワステポンプはエンジンと密着するような形となったため年式の新しい車両から流用することができなかった。
パワステポンプは全国どこを探しても情報も現物も見当たらないと諦めかけていたこともあり、
現地へ行った調査員はMR450廃車体のエンジンフードからパワステポンプが見えたときは思わず声を上げたという。

 

車内はラッシュバスらしく通勤電車のような横長シートが特徴。この時代の車両は床が高いこともあり現代のバスより天井が低い。
現役時代の姿を可能な限り再現するため旧型のワンマン機器を装備。テープ式のオートガイド、整理券機、降車ランプ、ツーマン運行用の装置も作動する。
腐食の酷かった非常口やリアエンジンフード、降車ボタン等は数台現存していたMAR470(元当社の車両)の廃車体から譲り受けた部品を再利用している。

型式 MR430(呉羽車体製)
全長 11.980mm
全幅 2.480mm
全高 3.060mm
エンジン DB34A(ターボ付き) 8,550cc
車両重量 約9,690kg
定員 45人(貸切登録のため着席のみ)


現役時代のMR430

朝夕ラッシュ時大量輸送のため1963年に旧旭川バス(1968年旭川電気軌道と合併)が3台導入した三菱製大型バス「MR430」。
主に当時の系統⑭旭橋経由末広線で運行され、朝夕通学ラッシュで大活躍した(貸切バスで勇駒別まで運行したとの情報もあり)。
126・127号車廃車後、128号車は先に廃車となった2台から部品供給を受け昭和53年まで活躍。3台とも春光営業所に配属されていた。
1977年の時点で当社の128号車は国内で運行していた「MR430」で最後の1台だったという。

 

車齢としては15年、7年~8年で更新されていたという当時の車両としては長生きであり、1台で1.5倍の輸送量を誇るこの車両を可能な限り使い続けたかったに違いない。
空車時の運転は難しくなかったものの、満員乗車での運転に技術を要するため乗務できる者は限られていたようで、
乗務する者は皆この車両を「ツーハンドル」と呼び愛着を持っていたとも言われている。
乗客が前方に偏るとハンドルが重くなるためその際はなるべく後方に居てほしいとお願いしていたとか。



廃車から44年振りに古巣の地へ里帰りした時の一枚(撮影場所:旧春光営業所構内)

型式 MR430(呉羽車体製)
全長 11.950mm
全幅 2.490mm
全高 3.090mm
ホイルベース 6.660mm
エンジン DB34A(ターボ付き) 8,550cc
出力 220ps/2.500rpm
トルク 72m・kg/1,500rpm
車両重量 約9,200kg
定員 110人(カタログ値)

春光車庫の名残

春光車庫解体時に発見されたMR430格納位置の名残
MR430がこの場所に居たという証が残っていた
※現在は下部1/3を残し春光バスセンターの塀の一部として活用


レストアの様子


2021年6月
レストア前の姿


2021年6月11日
当社関連工場へ入庫


2021年6月15日
腐食した部品などの取り外し
車輪が回転するよう車軸のメンテナンスを実施


2021年8月
腐食した前面フレームを作り直す作業中


2021年9月
エンジンとミッションを取り外し細部を点検
外板の取り外しがほぼ完了している
腐食が酷く発見は到底不可能と思われたフレーム打刻を執念で見つけ出す
※打刻が確認できなければ車検は取れない


2021年10月
屋根その他一部を残しそれ以外の外板の取り外しが完了
本格レストアに向けて車体の洗浄を実施


2021年11月
腐食したフレームを切断し元通りの形に新製中
運転席メーターパネルは再塗装され新品同様に


2021年12月
屋根と後部の一部を残しそれ以外は新製
エンジンは単体での始動に成功
ガスケットなどの補修部品が入手できないためエンジンの分解整備は断念したが
40年以上も手付かずの状況でありながらもコンディションは悪くないという


2022年2月
フレームが仕上がった後に新製した外板のリベット止め作業
打ち込んだリベットの数は約3,000本
エンジンも搭載され、作業は走行に向けて着実に進んでいる
内装のパネルやライトケースなども新製


2022年3月
左側の外板制作作業はほぼ完了し、右側の外板制作作業中
車内はまだ骨組みのままだが、新製された天井の内装が張られている


2022年4月
外板の制作作業がほぼ完了し、元の姿を取り戻してゆく
運転席まわりの電気配線はベテランの電装メカニックにより丁寧に配線されていく


2022年5月
旧旭川バスの特徴でもある斜め窓の枠も新製


2022年6月
板金作業が完了し車体全塗装のため塗装ブースへ牽引中


2022年7月
全塗装が完了し、新車同様の姿となった
この時点では走行において深刻な問題を抱えていた(エアコンプレッサー、ミッション)


2022年8月
ライトや方向幕、窓も取り付けられバスらしい姿を取り戻してゆく
車内では床板の取り付け作業中


2022年9月
車内の内張は完成し、座席の取り付け中
客席のフレームは木枠でできており、取り外した木枠と同じ形に作り直している
走行において問題であったエアコンプレッサーとミッションの問題は解決し、約44年ぶりに自走
ミッションは入りが悪かったギアをヤスリで丁寧に削り歯を整える処置を施したとのこと


2022年9月26日
無事車検前整備を終える
トラブル無く約10㎞先の運輸支局まで走ってくれることを祈るのみ


2022年9月27日
車検取得のため旭川運輸支局へ自走
この日がMR430レストア後初の公道走行となる
ベテラン乗務員による丁寧な運転で走りは快調
エンジンは元気そうで、加速も悪くないという
タイヤの数が多いおかげかリーフサスながらも乗り心地は悪くない
周囲からの熱い視線を感じつつ無事車検を通過しナンバープレート交付となる

登録番号は現役時代と同じ「128」
廃車から44年ぶりに奇跡の復活を果たす
エンブレム上のライトのようなパーツもダミーで再現(対向車ライトのセンサーとのこと)
国内で唯一とも言われる「公道を走れるMR430」
可能な限りこの状態を維持し後世に渡り継いてほしい


MR430レストアの情報

ご支援ご協力いただいた企業:15社
整備に携わった延べ人数:約1,000人
レストアにかかった時間:約8,000時間(1日8時間労働で計算)

レストア費用について
このレストアは観光庁の「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業 交通連携型」により助成を受け、
当社整備関連会社の旭川オートサービスより2,800万円で購入しております


新旧比較コーナー


約45年振りに旭川駅前を右折する姿
現役当時はどれだけの人々が視線を向けていたのだろうか
久々の凱旋では沿道に立つ多数のファンや報道陣に迎えられた


運転席
当時とはワンマン機器や計器類の配置がやや異なる


車内は現役当時よりも明るい印象
床板はお洒落なデザインを選択
イベントに参加した方からはずっと乗っていたいとの声が多い


エンジンは塗装され綺麗になっているものの基本的に現役当時と同じ姿
ガスケットの入手が不可能であるためオーバーホールは実施せずコンディションは廃車当時のままの状態
故障を防ぐため当時使用されていたものに近い成分のエンジンオイルを使用
ベルト類は新しいものに交換されている
欠品していたパワーステアリングポンプはMR450(6DB1エンジン)の部品を再利用
ラジエーターやホース類は装着可能なサイズのものを新調


MR430が紹介されたWeb記事など

・北海道新聞どうしん電子版(2022/11/3
・朝日新聞デジタル(2022/8/182022/9/252022/10/22
毎日新聞
読売新聞オンライン
日本経済新聞
バスマガジンWEB
乗りものニュース
WEBCARTOP
バスギアターミナル
くるまのニュース
共同通信社
旭川実業高校
HTB北海道テレビ公式YouTubeチャンネル「のりのり旭川ミステリーツアー未公開バストーク」